家の外が騒がしいです。
豊嶋です。
沖縄の昼下がり。
澄み渡った秋の空の下、
ベンチでタバコを吹かしていた。
視野にゆっくりと白い影が入ってきた。
中年より少し上の女性だった。
「おいのりさせてもらえませんか?」
とうとう順番が回ってきた。
お祈りさせてくださいの人。
「どうですか?10分ぐらいでおわりますよ。気持ちがスッキリしますよ。」
じっと彼女の目を見つめる。
(どうしようかな〜)
簡単に「いいですよ」と言うことも出来たが、それでは芸がないと感じた。
また何せ街中だったし、目をつぶって手をかざされている姿を、人に見られるのが恥ずかしかった。
悩んだ。
結果、とにかく話を聞いてみることに。
彼女曰く、今の世の中は間違っているそうだ。
たとえば、食品には生育の段階でふんだんに農薬が使われている。
全くこの世の中は間違っている。間違いがはびこっている。
彼女の目的は、真理の追求と、地上の楽園を作ること。
少しでも良いことをしたい。
良いことをすれば、長い目で見ていづれは自分に返ってくる。
そう信じ、この活動を続けている。
そして、このお祈りを受ければ、運命までが変わるとのこと。
ひとしきりの説明を聞いた後。
彼女「で、お祈りどうですか?」
まだ悩む。
団体の仕組みについて聞いてみた。
料金システム
入会費:数千円(月額不要!)
テキスト代:1000円
お守り代:秘密
お守り代が気になるが、とにかく格安だった。
それでどうやって運営しているのかが気になった。
慈善事業なのか?
その後も色々話を聞き、合間合間でお祈りの誘いを受けたが、
お祈りだけはやはり「恥ずかしい」「照れる」という理由で拒んでいた。
やるならどこか個室とか、人気がない所とか、車の中とか。
まあとにかく人目につかないところでやってほしい。
あとはお祈りが一瞬でできるとか。
どう見ても、お祈りしてるように見えないとか。
結局、話出して1時間弱は経っていた。
すると彼女は鞄の中から、おもむろに何かを取り出した。
DVD付きの資料だった。
それを僕に手渡し、一言。
「また機会があったらね。」
フラれた。
フルはずの立場が、逆にフラれた。小さくショック。
彼女の気持ちもわかる。
”10分で済むお祈りのために、1時間も会話するヤツいるか!?プンプン”
彼女は最後の笑顔を残し、どこへともなく去っていった。
僕は、もう一本タバコに火を点けた。
隣のベンチでは、ホームレスおじさんのラジオから、演歌がちょうどいい音量で流れていた。
豊嶋