※これはフィクションです。
市長選が行われた。
新しい市長は、今計画されている都市計画を、ガラリと変えた。
以前の計画は、旧市街地を取り壊し、すべてを新しいものに変えるというものだった。
そこには高層マンションが立ち並び、有名な商業施設が立ち並ぶというものだった。
新しい市長は真逆のことを実施すると言った。
旧市街を残すことにしたのだ。
旧市街地は、金網で囲まれた地域で、戦争の歴史、軍事施設の色を色濃く残す街だった。
一般市民は立ち入り禁止の区域だった。
市長は、その金網をすべて残した。
残していい軍事用の建物を残した。
あるものを最大限に利用することによって、予算は当初の3分の1に抑えられた。
市民以外が、金網の中の旧市街地に入るためには、入場料を取った。
それでも観光客や、地元の来場者は絶えなかった。
金網があるからゆえに、区域内は最も治安の良い観光地となった。
今まで無名の街が、戦争の記憶を色濃く残す都市として、世界的に有名な観光地となったのだった。
新市長が考えたことは、
”地域のために何ができるか”
ということではなかった。
この地域が、
”世界のために何ができるのか”
ということだった。
やがて、その街は世界遺産に登録された。
街の片隅には、市長の記念碑が建てられている。
※これはフィクションです。
豊嶋
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