沖縄には弁当屋が多い。
というか、弁当の文化といっても過言ではない。
職場で、弁当を食べる人々。
弁当を配達する人々。
弁当を路上販売、店頭販売する人々。
沖縄の昼食の代表は弁当だ。
その中でも、一際、気に入っている弁当がある。
その弁当は、弁当の半分が野菜だ。
普通、弁当といえば、まあ殆どの場合、 半分が肉的なもので、野菜はちょっと。
ご飯が六割ぐらいというのが、大半だと思う。
そして、揚げ物が多いというのが、現状。
毎日食べるものだし、バランスを考えれば、
もう少し野菜が多い弁当があればなーと思うところだ。
だが、唯一ある。
パーフェクトバランスの弁当。
そのお弁当のお値段。 350円。
コレを知ったのは、国際通り最裏手の小さなお弁当屋さんだ。
聞く所によると、このお弁当自体は、また別のところで作っているという。
住所を教えていただき、何名かで、沖縄南部にある、そのお弁当屋さんを伺った。
我々が外からお店の中を覗きこむと、
目鼻立ちの整った、上品な雰囲気の女性が中に招き入れてくれた。
簡単に挨拶を済ませるが否や、怒涛のお店紹介が始まる。
沖縄でいう「カメーカメ―(沖縄方言で食べなさい、食べなさいの意味)攻撃」のおしゃべり版だ。
熱い思いが、彼女を饒舌にする。
本物のアグーを使用し、ちゃたんの塩を使い、 野菜は全て本物の国産。
その野菜を洗う洗剤も化学薬品無添加。 油は料理ごとに使い分けている。
極力黒糖を使い、のどに引っ掛かりのないまろやかさを出している。
米を炊く水も、普通の水じゃない。
このこだわり様、半端ないな。
実際食べさせてもらった昆布の煮物も、 塩味に引っかかりがなく、
素材の味を活かしたまま、 いつまでも噛んでいられるぐらいの自然な温かい味わいだった。
そこで、儲け度外視ということだったので、
値上げの提案を一言いうと、 彼女の言葉には、一気に熱が入った。
「値段を高くしたら、いくら良くても、沖縄の人は買わない。買えない。私はこの値段でやります。」
午前中、値段のことで、兄弟と喧嘩してたっていうのを、すっかり忘れてました。
繰り返す。
弁当の値段は350円。
この話を聞いた後で、もはや僕は値段のことをとやかく言いません。
その他、色々な話を聞きました。
元々はエステ業界で働いていたこと。30年間。
オープン当初はバイキング形式の店。3ヶ月間は大赤字だったこと。
兄弟の中で、一番料理が下手なこと。昔、親を審査員に兄弟で味を競った思い出。
「時間が足りない。まだまだやりたいことがあって、今度、調理師の資格をとるの。」
「夜2時に起きて、3時に出勤。4年間で一度も、つらい、いやだ、サボりたいと思ったことはない。」
「私は本当に料理をするのが楽しいし、好き。良い物を作りたいし、食べてほしい。」
「食べたいものがあったら言ってほしい。それを作るから。食べて喜んでもらえたら嬉しい。」
彼女のこだわりは、
決して人への押し付けではない。
ただ自分のプライドを貫いているだけ。
そんなふうに感じた。
働くということの喜びが、体中から溢れだしていた。
そして、1時間のうち、9割8分2厘(当社計測)、彼女がしゃべり、取材の幕は閉じた。
その日、沖縄は久しぶりの雨天だった。
僕らはといえば、
彼女の料理に対する底知れぬ情熱と、
子供らへの愛情がこもった言葉の豪雨を、
全身に浴びまくった。
「私はもういい。未来を背負うあなた達に、健康であってほしい。」
豊嶋
パーフェクトなバランス!愛情あふれる沖縄のこだわり健康弁当
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