※これはフィクションです。
村長が言った。
「うちの村は、今でも人が少ないのに、また人がどんどん減っていく。どうすべな〜」
青年会の男が言う。
「いや。だからいいんだべ〜」
村長「??」
青年「誰もいねがら、何ぼカラオケの練習しても、文句言われね〜もの〜」
村長「!!」
それからだった。
有り余る土地の中に点在する空き家は、音楽スタジオへと改築されていった。
人っ子一人いない、喧騒からは隔離された場所。
そこは創作に集中するには、うってつけの場所だった。
人が近所に住んでいないから、夜は音ひとつしない。
多少大きな音を出しても、誰の迷惑にもならない。
スタジオには必要なものが、全て揃えてあった。
注文すれば、村で採れた新鮮な食材を使った弁当の宅配も利用できた。
隠れ家的、音楽村。
人知れず、ここからたくさんのヒット曲が生まれた。
一躍有名になったアーティストたちは、環境維持のため村に多額の寄付をした。
皆が村の存続を望み、協力した。
村はアーティストにとって、なくてはならない場所となっていた。
過疎ということ自体が、価値となったのだった。
青年は、今日も練習に励む。
村長にもらった最新鋭のレーザーカラオケで。
※これはフィクションです。
豊島浩平
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