※これはフィクションです。
北の大きな街。
寒い街。
その街は過疎地域だった。
若い人は、ほとんどいない。
人口の高齢化と少子化が進んでいた。
そして図らずも、そこは自殺者の多い街だった。
駅前はシャッター街。
郊外型のショッピングモールのせいで、商店街はなくなり、完全なるドーナツ化現象が起きていた。
北の取り残された街となっていた。
市長は、時代の流れと逆行する、誰が見ても無理なスローガンを歌っていた。
市民の誰もが諦めていた。協力する気などサラサラなかった。
市長は場末の酒場で、酒をあおっていた。
そこへ、南の小さな街からきたという青年がやってきた。
北の大きな街のありさまを見て、酒場の大将にこう言った。
「いっその事、もっと高齢化すればイイじゃないですか!」
市長は耳を疑った。
(おいおい、冗談はやめてくれよ。。)
訝しくしかめ面をする市長をよそに、青年は話を続けた。
「現役を退いた人たちに、住まいを与えてください。
それも駅前に。どうせいっぱい余ってるでしょ?
駅前は少なくとも、他の場所より便利。交通の便もイイし、コンビニだってある。
年を取ってから、遠くに買い出しに行くのなんて億劫なんですよ。
駅前に人が住みだして、お金をそこで使い始める。
そしたらね、駅前でお店をやる人もだんだんと出てくる。
もしも引退後の農業とかにも憧れてるんだったら、その時はどこでも好きなところでやってもらいましょ。
どうせ土地はたくさんあるんだから。」
(確かに、、それで都市部のドーナツ化現象は解決するかもしれない)
「あとね、現役でバリバリやってた人が引退してこっちにくるわけですよ。
それはね、知恵が集まるってことなんですよ。
その人たちを街で雇っちゃいましょうよ。
給料はそんなに高くなくてもイイと思います。
退職金もあって、お金には困ってませんから。
それよりも、意味なんですよ。生きる意味。それが必要です。
そしたら、全国の老若男女が、その知恵を借りにきますよ。
いや世界中の国の人々がやってきますよ。
だって、つい最近までこの国の第一線でやってきた人たちなんですよ?
あらゆる業種のコンサルタントの街。知恵の街になりますよ。」
(そううまくいくか?)
「それでね、その人たちの終の街になりましょう。
この街で、最後まで現役で、自分の使命を全うする。
こっちが住むところを提供する代わりに、墓を立ててもらう。
もちろん家の墓ってのがあるかと思うんで、個人の墓。その人個人をたたえた墓を。
そしたら、葬儀屋、石屋、坊さんなんかも助かると思いますよ?
あとは毎年、家族親戚が墓参りにくる。
ちなみに、一番楽な死に方は、冬に酒飲んで寝ることです。
安らかな眠りに入るように逝けます。つまりこの街がまさにうってつけ。
どうですか?」
(ふ、ふ、ふ、不謹慎な!!)
市長はその次の年、政策を打ち出した。
「定年退職者受け入れ制度」
現在、北の大きな街は、
南の小さな街の様々な産業を、
地域交流を踏まえ、コンサルしている。
※これはフィクションです。
豊嶋航平