水と風の国に、一匹の蛇がおりました。
その蛇は曲を作り、歌うのが好きでした。
そして、料理が上手でした。
しかし、蛇は蛇でした。
いつも地べたを這いずり回り、知らず知らずのうちに周りから嫌われていました。
そんなことも気付かず、蛇はいつも空を見上げていました。
「いつか空を飛びたいな」
そこに3人の神様がやってきました。
1人は太陽の神様。
1人は月の神様。
1人は大地の神様でした。
太陽の神様は、愛情と摂理の神様でした。
月の神様は、言葉と知恵の神様でした。
大地の神様は、豊穣と行動の神様でした。
「あの蛇はどうだい?」
ちょうど召使いの龍の代わりを探していた神様達は、
見込みのありそうな蛇を見つけて、手を差し伸べました。
次の日から、蛇は餌にありつけるようになりました。
いろんな頼まれ話がやってきて、物事がうまく回りだしました。
周りから尊敬されているようになりしました。
歌がどんどん作れるようになりました。
調子に乗った蛇は、それを全て自分の手柄としました。
餌を当たり前のように食べ、摂理について学ぼうとしませんでした。
自分の力だと勘違いしたのです。
それからというもの蛇は、たまにしか料理を振舞わず、ただただ偉そうにしていました。
神様達の存在に気づいていませんでした。
ずっと暗く低いところにいた蛇は、目も耳もきかなくなっていたのでした。
月の神様は、そんな蛇を見て、すぐに見放しました。
月と大地の神様は、それでも蛇を見放さず、辛抱強く見守っていました。
しかし、度重なる蛇の愚行を見て、とうとう太陽の神様も大地の神様も諦めかけていました。
なんだか最近調子の悪い蛇は、沈んだ顔で夜空を眺めていました。
そこに月の神様が通りかかりました。
月の神様は、仕方なく蛇に最後の知恵を授けました。
「君は恵まれた蛇だ。
君の上には、摂理の神様と、豊穣の神様が見守ってる。
それはとてもとてもありがたいことだ。あとは、君の能力を発揮するんだ。
君は料理に集中し、作り続けるんだ。そして君の一番得意な料理で皆を喜ばすんだ。
そうすれば、きっと2人に恩返しできる。
もしそれができたなら、次に私は言葉を授けるよ。それを歌にするといい。
君は何も心配せず、全ての才能を活かせる環境が与えられているんだよ。
君の料理と歌は、この国を超えて、知れ渡るよ。
そして君は蛇から龍になるんだよ」
静かな夜だったので、蛇の耳にもよほどよく聞こえたのでしょう。
蛇は考えることができませんでしたので、月に言われて、ようやく気が付きました。
蛇は自分の無知さを知りました。
しばらくたったある日のこと、
一匹の蛇が、空を高々と気持ちよさそうに飛んでいく龍を眺めていました。
トッピンパラリのぷ〜
豊嶋浩平